WATCHING?

ARCHITECTUREMOVIE PROJECT
WATCHING ?
by Riku Nakagawa

DIRECTOR

中川 陸

中川 陸

Riku Nakagawa

ショートフィルムのディレクターを務める「ナカリク(中川陸)」は、もともとストリート系の音楽やファッションに傾倒していたが、建築デザインの道に。「東北はすることがあまり無いぶん、やりたいことにマイペースにどっぷりつかれた」。
スイスで、建築家のピーター・ズントーの作品(バルスのバス・聖ベテディクト教会、ローマ遺跡のためのシェルター)を見て感銘を受けた。いままで見た建築とは違い、日常では動かない低速度で、シークエンス、スケール、素材、ストーリーを体験した。
25歳で東京に。不動産コンサルティング会社のリーダーに抜擢されるが、同世代の若い建築家たちとの交流を通じ、映像を生み出すことになる。第一作の「素物(そぶつ)」が撮影された、東京の新島。船で一晩。その記録を取り、建築家や、現地での映像編集者たちとの対話の中で、完成した建築ではなく、作りて達の「視点」を保存するアーカイブの感覚。まなざしの記録。2026年には、岡山映画祭を訪れ、正式出展ではないが、映像作品を上映した。

CONTENTS

What is Watching?

現代はバイブスに満ち溢れている。
政治、カルチャー、そして空間においても、すべてにおいて。しかし言葉や思想より先に、それらは消費されていく。美しさや価値観さえも、ディスプレイの表面を空気感やテクスチャとして高速に流れ落ち、ミームとなり、いまという瞬間のそれっぽさへと収斂され、本当に自分の眼で世界を観ているのか不安になる。

美しいと感じる根拠、心地よいと感じる距離、歩みを止める景色、肌が反応する空気。本来それらはもっと個人的で、身体的な感覚だったはずだ。その知覚を極端な精度で扱う存在が、建築家なんだろうと思う。彼らと世界との「距離」を見ており、その知覚の「幅」として建築が立ち現れるものなのかもしれない。

私は建築文化から半歩外側にある、経済や市場を扱う者として建築家と並走してきた。
土地、法規、金融、事業性。建築が成立するための諸条件に触れながら、創造性と社会のあいだを翻訳する仕事を続けている。

不動産や都市開発の世界は、空間を均質化する。収益性、再現性、回転率、成長性。空間は常に、数値へと変換され、最適化される。しかし私はそのジレンマに身を置きながら、ずっと別のものに触れてきた。

建築には、収支計画やマーケティングでは捉えきれない、個人的な感覚や身体性、原風景のようなものがあるということ。

漂うバイブスへ自分を合わせ続ける時代の中で、建築家の視覚を通して、もう一度自分自身の知覚で世界を測る。ここは、そのための実践なのかもしれない。